コラム ── 道具選びと開発

小説同人誌を作るためだけにInDesignはオーバースペックすぎない??と思った話

2026年7月23日 ・ 読了 約7分

最初に言っておきますが、InDesignは素晴らしいソフトです。 天下のAdobe様のソフトですからね。商業出版の組版はこれで回っていて、品質に文句のつけようがない。なので決してInDesignを腐したいわけではなくただ……「小説同人誌の本文を組む」という目的に対して、InDesignという道具は大きすぎない? という、サイズの話。

本を出すにあたって小説同人誌の組版についてまあ結構調べたわけですが、最終的にたどり着いた結論は「安定してがちっと決めたいならどうやらInDesign一択っぽい」……じゃあ使ってみるか!で即契約→マジで全然わからんの王道を踏みました。

ちなみに開発者はデザイナーじゃないけどPhotoshop10年以上、Illustratorもさわれなくはない、Adobeのショートカットがあらかた身に付いてる程度には使ってきた人間ですが……これだけAdobe製品触ってきたのに、こんなになにもわからないことある??って感じでした。

しかも月額がちょっと高い……そんな契約したもののチュートリアルを開いて画面を見て、そっと閉じる。——この記事は、そのそっと閉じた手の行き場の話です。

InDesignは何がすごいのか

そんなわけでTela作るまではなんだかんだAdobeに親しみもありますしInDesignで作ってきました。安定してるしなんでもできるしね。
さすが商業の現場で選ばれるのには理由がある。

  • 禁則・ルビ・縦中横・約物処理など、日本語組版の機能が全部入りで、しかも細部まで調整できる
  • 雑誌のような複雑なレイアウト(写真・図版・多段組・回り込み)が自由自在
  • 商業印刷の要求(PDF/X、カラーマネジメント、特色)にフル対応
  • 書籍・雑誌・カタログ・パンフレット、紙もの全般なんでも作れる

つまりInDesignは「紙のレイアウトで人類がやりたいこと全部」に応える道具です。だからプロが使う。ここまでは何の異論もありません。
スクリプト入れてほぼ機能拡張みたいなこともできるしね。……でもどれだけの字書きがInDesignを使いこなしたうえでスクリプトまでいけるのか……。

では、小説の本文組みで使う機能はどれか

小説同人誌の本文を組むとき、必要なのはこのへん。

  • 縦書きで、字下げ・禁則・ルビ・縦中横がちゃんとしている
  • 版面(1行◯字×◯行)を決めて、全ページその規範が守られる(崩れない)
  • ノンブル(ページ数)が自動で入れられる
  • 章扉と奥付が作れる
  • フォントを埋め込んだ入稿品質のPDFが出る

私はだいたいこんなところです。写真の回り込みも、多段組の複雑なレイアウトも、特色印刷も私には必要ない。InDesignの膨大な機能のうち、小説の本文組みで触るのはほんの一角——体感で1割です。

問題は、残りの9割が「使わないだけ」で済まないことです。

使わない9割も込み込みでのしかかってくる

①: お金

InDesignはサブスクリプションで、単体プランで月額数千円、年間にすると数万円です。商業デザインの仕事道具としては妥当な価格です。ただ、年に数回の同人誌のために契約すると、使わない月も含めて「全部入り」の料金を払い続けることになります。1冊の印刷費と比べてみると、なかなかの存在感です。

②: 学習時間

InDesignの画面は、初めて開くとどこに何があるのか本当にわからない。これは悪口ではなく、プロの要求全部に応えるUIの必然です。さらに専門用語が多すぎる……言葉がわからないから調べるのも一苦労なんですよね。字下げがしたい、段落の始めを自動で一字下げたい→ 正解は「文字組みアキ量設定」……なんなのその日本語初めて聞くんだけど、みたいなことが頻繁に起こります。
レイアウトグリッド、マスターページ、段落スタイル、文字スタイル……概念を一通り覚えて「縦書き小説の本文を升目どおりに流す」までが、まず一山。書きたいのは小説なのに設定だけで時間がアホみたいに溶けました。(その割に痒いところに手が届かない感じもあるんだよなー……まあ小説組版だけのソフトじゃないからね)

③: 迷子(もう本当にわからない)

機能が多いということは、項目が多く、事故る場所も多いということです。まあメニューが深い深い。そんでもって並びのルールも全然わからない。——トラブル時に疑うべき場所が多すぎて、検索しても商業デザイナー向けの解説しか出てこない。小説の本文だけ組みたい人にとって、この広大さはそのまま迷子のリスクです。

本当の問題は「間がない」こと

ここまで読んで、「じゃあWordでいいじゃん」とはならないのがつらいところです。Wordは逆方向の問題を抱えていて——ルビで行間が崩れ、OTFフォントの埋め込みに難があり、升目の思想がない。そもそも文書作成ソフトに組版を求めるのは酷な注文なのでした。

つまり構図はこうです。

  • Word: 手軽だが、組版の土台がない(無理させてる感がすごい)
  • InDesign: 完璧だが、価格と学習の壁が高い(使いこなせない感がすごい)
  • その間: ……?

あと有名どこだと一太郎とかですかね?私は使ったことないんですが結構高価ですよね。一回がっつり触ってみる前に出す金額としてはなかなか勇気がいる金額……という2026年にもなってこの選択肢のなさすごいな!?ってなったのが開発のきっかけです。
だいたいの小説同人誌の書き手が本当に必要としているのは「InDesignの1割——縦書き小説の本文組みに関わる部分——だけを、ちゃんとした品質で、手軽に簡単に」なのに、日本語の縦書き組版というニッチさゆえに、この中間地帯には長らく選択肢がほとんどありませんでした。
InDesignはすごい。技術と知見の結晶。でも何千、何万って刷る商業文芸と一桁からの少部数〜多くて100部くらい?(私はMax1冊で120部くらいですがジャンルによるかな……?)の小説同人誌が同じソフト使ってるのって市場的にはあんまり健全じゃないなあなんて思ってしまうんですよね。

じゃあどうするか(正直な指針)

  • 同人誌以外でも紙ものを作る予定がある(ポスター、ノベルティ、凝ったレイアウトの本): InDesignの9割を使う日が来ます。契約する価値あり
  • 無料で、ルビ少なめ・短めの本をまず1冊: Wordで頑張る……!(ルビ振らない選択もあり)
  • 小説の本文を、商業品質で、継続的に出したい: 中間地帯の専用ツールを探すフェーズです。判断基準は「縦書きの升目が崩れないこと」「OTF含むフォント埋め込みが正規なこと」「入稿仕様のPDFが出ること」——このコラムで書いてきたチェックポイントそのままです

Telaはその中間地帯を埋めるために作ったソフトです。というより、開発者自身が選択肢少なすぎるよ!(あとInDesign解約したい、私には圧倒的オーバースペックなので)……の想いから自分で作ることにした結果です。

みんな好きなソフトやアプリ使ったらいい、って手放しで言えるくらい選べる幅が広がったらいいですよね。

よくある質問

Q. InDesignを安く使う方法はないんですか?

Adobeのセールや学生・教職員プランなど価格が下がるルートはありますが、サブスクリプションである構造は変わりません。「使う月だけ契約して解約」も、年間プランの解約料や再学習コストを考えると見た目ほど身軽ではないです。

Q. 昔の買い切り版(CS6など)を使うのは?

サポートが終了して久しく、現行OSでの動作やフォント環境との相性に問題が出ることがあります。入稿データを作る道具として、いまから頼るのはおすすめしません。それこそ使いこなしてる人向けでしょうね。

Q. InDesignが使えれば同人誌の幅は広がりますか?

広がります。凝ったレイアウトのアンソロジー、小説+イラストの混合本、グッズ類まで視野に入るなら、InDesign一択。無駄になりません。この記事はあくまで「小説の本文を組むためだけ」に契約を迷っている人向けの整理です。
※複数レイアウト、イラスト・画像配置はTelaもできます

Tela は編集・保存・プレビューは無料。PDF 書き出しだけ、使うときにチケットを買う方式です(30日 ¥980 / 90日 ¥2,400・ベータ期間中は無料)。 Tela を見てみる →

Tela

このコラムは、縦書き組版アプリ Tela の開発者が書いています

InDesignはすごい、だけど難しい……。
ベータ期間中は全機能無料です。

Tela を見てみる

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